A.Mさん

Kiyo Sakaguchi奨学金は、米国で数学を学ぶことを志す高校生・大学生への支援を目的として2005年に創設され、奨学生への支援を行ってまいりました。2018年度奨学生であり、テキサス州の私立大学で数理統計学を学ぶA.Mさんへのインタビューを紹介します。

留学を希望した経緯

元々数学が好きで、数学者への道を志していたのですが、高校3年生のときに米国へ短期の交換留学をしたことが大きな転機となりました。交換留学先で開催された数学の州大会に参加したのですが、そこで2位という成績を収め、米国の5つの大学から入学推薦をいただくことができたので、米国の大学への進学を決意しました。

また、その州大会で優勝したのが地元の公立高校に通っている学生だったということも一つの大きな要因です。日本では、数学教育のシステムが整った進学校の数が限られているので、そこへ通うためには、地元を離れたり、通学に時間をかけたりする必要があります。しかし、米国ではそのシステムが地方の公立高校まで広く浸透しているのだということを実感し、かねてから「日本の数学教育を変えたい」という夢を持っていた私にとって、目指すべき環境を知るためにも留学が必要だと感じました。

奨学金を希望した背景

私が進学した大学は学費が高く、大学からの奨学金があっても足りないほどでした。両親に相談しましたが、私には下の兄弟もおり、これから彼らに掛かる学費等を考えると1年半分の学費しか出せないと言われてしまいました。ですが、私はどうしても自分の夢を叶えたかったので、1年半以降は自分の力で何とかしようと考え、米国に渡りました。留学後、インターネットで学生支援について調べる中で本奨学金を知り、創設の背景からも私の夢を後押ししてくれる奨学金だと感じたので、応募させていただきました。

現在学んでいること

現在は、数理統計学が中心です。最近ではとくに、コロナ禍ということもあり、数理統計をワクチン接種の普及に活かす研究をしています。ワクチン接種の宣伝が実際の摂取率にどのように影響しているかなど、まさに社会の役に立つ内容なので、とてもやりがいを感じます。

また、成績や教授推薦等により選ばれた約5%の学生のみが入ることが出来るオーナーズカレッジというコミュニティに所属し、学生同士で切磋琢磨しながら研究に尽力しています。米国人のルームメイトが5名いるのですが、彼らとはよく夜中の2時頃まで数学に関するディスカッションをしています。

最近では、米国数学協会が毎年開催している数学コンテスト(Putnam Competition)に大学代表として出場するなど、チャレンジの場があれば積極的に取り組むように心がけていて、一つ一つを自分の成長に繋げたいと考えています。

コロナ禍での過ごし方

昨年は、コロナ感染拡大に伴い大学が閉鎖されてしまったのですが、米国はITを活用した教育もすでに進んでいたので、すぐにオンライン授業へ切り替わりました。また、私が住んでいた大学の寮が閉鎖となってしまった際には、高校の短期留学の際にお世話になったホストファミリーが声を掛けてくれ、4ヶ月ほどホームステイをさせてもらいました。本当に、周りの手厚いサポートがあって乗り切れた1年でした。

それから、私の住む地域もコロナ禍で大変な状況になってしまったので、ボランティアも積極的に行っています。コロナが流行し始めた当初は、米国ではそれほどマスクが普及していなかったので、価格が高騰し、マスクをしたくても出来ない人が大勢いました。そこで、友人と2人で布製マスクを手作りし、近所の教会で配布しました。普段、母国から離れて暮らす私を気にかけ、お世話をしてくれている地域の皆さんへの恩返しだと思っています。

現在の夢

何か一つに分野を絞るのではなく、現在取り組んでいるワクチン接種に関する研究のように、その時々で世界で起きていることに対して貢献できるように幅広い知識を身につけたいと思っています。また、日本の数学教育を変えたいという夢も持ち続けているので、例えば情報発信という形でこちらにも貢献していけるよう、まずは米国の数学教育システムを学んでいます。他にも、教授からアクチュアリーの資格取得を勧めていただいたので、幅広く自分の道を検討しているところです。

Kiyo Sakaguchi奨学金で人生がどのように変わったか

この奨学金をいただかなければ、積極的に夢に向かう今の私はありませんでした。完璧に整った環境の中で数学について深く学ぶことが出来ていますし、数学以外の部分でも、日本では知りえなかったことを日々多く学べています。本当にありがとうございます。これからも、興味のあることを必死に全力で学んで、いつか何かの形で恩返しができるように成長していきたいと思います。