T.Gさん

Kiyo Sakaguchi奨学金は、米国で数学を学ぶことを志す高校生・大学生への支援を目的として2005年に創設され、奨学生への支援を行ってまいりました。2017年度奨学生であり、アメリカの大学院にて集合論を学んできたT.Gさんへのインタビューを紹介する。

将来の目標について

集合論の研究者になる予定です。加えて、数学教育にも携わりたいとも考えています。私の専門である集合論という分野は専攻する学生が多くないのですが、その実態は「関心はあるが知る機会がない人が多い」ということだと感じています。アメリカの大学でティーチングアシスタントとして学生と関わった経験から教育の重要性を感じたので、これからも研究と並行して学生との関わりを積極的に持ち、後進の道標となることを目指したいと思っています。

奨学金に応募した理由

大学の先輩からの紹介です。数学を専門的に学びたい学生にとって、一番のネックとなるのが対象となる奨学金の少なさです。理系学科の学生を対象とした奨学金の選考では、学部生の時点ですでに目覚ましい研究成果を持つ他学部の学生と競わなければなりません。しかし、数学専攻の場合は同時点で研究成果を持つ人はほとんどいません。そうした意味で、自分の夢を叶えるにはKiyo Sakaguchi奨学金しかないと思いました。

学業に関して努力していること

多くの論文や書籍を読んで知識をインプットし、それを他の人との議論を通してアウトプットすることです。専門性を高めるためには本当に多くの知識が必要で、1人で学び切るのは非常に難しいです。そこで、研究や学習をチームプレーだと考え、「あなたの研究について、こういうことを教えてほしい」と質問するなど、他の研究者との交流をとくに重視してきました。

また、こうした交流に必要なコミュニケーション力は、留学してから高くなったと思います。アメリカは自分の意見を臆さず主張するのが当然という環境なので、私も自分を前に出す積極性を自然と身につけることが出来ました。

留学先での周囲との関わり方

学生同士、自ら横の繋がりを作ろうという積極性があったので、友人もスムーズに作れました。ピザを一緒に食べたり、皆でボードゲームをしたりする交流の場が頻繁に設けられます。留学1年目も、苦労はありましたが、同じ留学生含め周囲の学生が非常にタフだったので、彼らから刺激を受けることで自分もタフになれました。

留学してから苦労したこと

博士課程の2年目は、なかなか研究成果が出ずに苦労しました。原因は、やりたいことに対するインプット不足です。これに気付いてからは勉強にさらに力を入れ、3年目の夏頃に漸く研究課題をあらゆる方向から考えるための十分な知識をつけることが出来ました。また、他の研究者とのコミュニケーションも不足していたので、自ら積極的にアプローチして新しい視点や考えを取り入れるようにしました。

Kiyo Sakaguchi奨学金で人生がどのように変わったか

人生は180度変わりました。数学的な側面で言えば、アメリカへの留学が叶ったことで、その分野の最前線で活躍する研究者から直接学ぶことが出来ているというのがやはり一番大きいです。セミナーや人づてでは得られないことも肌感覚で学べますし、研究においては直接見て学ぶことも非常に多いです。

内面的な側面でも、実はとても大きい変化がありました。日本にいた時は、考え方が似た人と集まっていることが多かったためか、頭が固く、視野も狭かったように思います。しかしアメリカで学ぶ場合、それでは生きていけません。上述のように多様な考え方を持つ人と積極的に交流することで、リフレクシブになれました。研究以外でも、自分を客観視する視点を得ることができ、自分自身がどのような人間なのか見つめ直す機会になりました。家族からも、性格が変わったと言われるほどです。

また、国際的な視野を持てるようになったことも大きな変化です。例えば政治面では、政権交代や紛争によって人々の生活にどのような影響が出るのか、また人々がそれをどのように感じるのかを間近で体感してきました。今後国際的な活動をしていきたいと考えているので、国・地域によって物事を見る視点や捉え方が違うのだということを留学の経験を通して理解できたのは重要な学びだったと思います。