Episode 04

2013年 お腹の子を産む勇気を与えた“一通のメモ”

自分にもしものことがあったらと、妻と子どもたちのために契約した生命保険。契約からわずか4ヶ月後、幸せな家族を突然の別れが襲ってしまう。夫亡き後、明らかになった新しい命の芽生え。その誕生を後押しすることとなる入社6年目のライフプランナーが書き留めた“一通のメモ”とは――。

ライフプランナーの岡本は、お客さまの誕生日にはバースデーカードかメールを、毎年欠かさずに送るよう心がけている。その日はT様というお客さまの誕生日で、いつものように当日の朝、お祝いのメールを送信した。午後になり、T様のご自宅から岡本の携帯に着信があった。普段は携帯からしか連絡してこない方なので、自宅からの電話を不思議に思って出てみたところ、T様の奥様からだった。「――今朝、主人が亡くなりました」。

T様の運転する車の単独事故。自宅からわずか数百メートルのところだった。車は衝突後すぐに炎上したようで、荷物も含めほとんどが燃えてしまっていた。死亡したドライバーの正確な身元は、DNA鑑定を待たなければいけない状態だった。しかし、奥様は車のナンバーとわずかに遺された品々を見て、亡くなったのはご主人であると認めざるを得なかったという。あまりに突然の出来事で現状を理解できない中、「何かあったら電話するように」とT様から教えられていた岡本のことを思い出し、連絡を入れたのだった。

岡本にとっても、まさに寝耳に水の出来事であった。「頭の中が真っ白になり、何かの間違いじゃないかという気持ちでいっぱいでした」と、当日のことを振り返る。
岡本とT様は、最初から“ライフプランナーとその顧客”という関係ではなく、もともとは勉強会を通じて知り合った知人同士だった。ある日酒席での雑談から、T様がどこの生命保険にも入っていないことが判明。奥様との間には2人の男の子がおり、さらに現在3人目のお子様を身ごもっているとのこと。それならばと、岡本はすぐに商談を申し出た。3児の父親になる方に万が一何かあっては、奥様がお困りになるだろうと案じたからである。

T様も興味を示し、さっそくファクトファインディング(顧客の実情調査。以下、FF)を行った。T様の望むとおり、万一の場合でも、3人のお子さまが成人するまでの学費や生活費などを含めて、家族全員が安心して生活できるように設計したところ、保障額は1億円近くになった。岡本は早くこの結果をお伝えしたかったが、美容室経営をされていたT様は新店オープンなどが重なって忙しい日々が続き、なかなか面談の機会は得られなかった。

FFから3カ月が過ぎ、ようやくお会いできたT様に保険の設計を説明すると、すぐに快諾された。保障が手厚い分、保険料は決して安くはなかったが、プランの調整はほとんどせずに、スムーズに契約が進む。あまりにも簡単に決められることに、逆に不安を感じた岡本が質問すると、T様はご自身の生い立ちを語り始めた。「父を早くに亡くしたんです」。母親の女手一つで育てられたこともあって、絶対に妻や子どもたちに苦労はさせたくないという強い意思があったのだ。

こうして新規契約された日から、わずか4カ月での訃報――。仕事もとても順調で、心身ともに健康であり、亡くなられることなど誰もが想像もしていなかった中での出来事だった。契約から日も浅い、自損の自動車事故。飲酒や薬物摂取など、被保険者自身の重大な過失がある場合や契約間もない時期の自殺とみなされると保険金をお支払い出来ない可能性がある。警察や会社の調査結果によっては、保険金をきちんとお届けできなくなるかもしれないと、岡本の脳裏を不安がよぎった。
「実は、それまで私は保険金のお支払いを経験したことがありませんでした。約束を果たすことが私たちの使命なのに、初めてのお支払いでこんなに気を揉むようなことになるとは。奥様との電話を切ったあと、頭の中を整理し、やっとの思いで上司に一報を入れたと記憶しています」。

T様の告別式から2日後、岡本は保険契約の説明をするため奥様の元を訪れた。憔悴しきっていた告別式よりは幾分落ち着いたようではあったが、まだ25歳とお若く、幼子を抱えて未亡人となった奥様は非常に不安そうだった。
保険の契約内容を説明し、生活費や子どもの教育資金もしっかり確保できていることを理解すると、奥様は少し安どの表情を見せられた。しかし、保険金を必ずお支払いできるという確証は、この時点ではまだ得られておらず、加入していた保険内容の説明にとどめた。事故現場のブレーキ痕や薬物反応などを調べる警察の鑑定などが控えていたからだ。
しかし、今は奥様の不安を取り除き、保険契約に託したT様の“想い”を伝えることが何よりも優先されるべきだと、岡本は感じていた。

奥様が10歳年下ということもあり、T様はふだんから何でも自分一人で決める傾向があった。保険のことも一切奥様には相談されず、FFも本人のみで済ませている。せめて契約時のご家族への想いを書き残すための「ラブカード」をお渡ししていたが、残念ながら未記入のままだった。

つまり、T様からご家族を想う気持ちを直接聞いたのは、岡本ただ一人だった。しかし事故直後、「奥様とお子様には絶対に苦労をかけたくないと、ご主人はおっしゃっていました」と伝えても、それだけでは奥様にはどうも実感が湧かない様子だった。
それが何度か面談を重ねるうちに、奥様もT様の気持ちを深く知りたいと感じ始めたのか、「契約の際、主人は何と言っていたのでしょう」と尋ねてこられた。

「なんとしても、自分が伝えなくては」。岡本は使命感に突き動かされ、T様の痕跡を探ったところ、契約時に使用する顧客管理ソフトの中にメモが残っていることを思い出す。岡本はノートパソコンの画面を差し出し、自分がT様の言葉を直接入力したメモ欄を、奥様に見ていただいた。

「奥様へ 自分と結婚して 子宝に恵まれて本当に幸せ 心から感謝している
子どもたちへ 大きくなったら お父さんの代わりに しっかりとお母さんを助けてください 健康で意思の強い大人になってください」

画面の文字を追いかける奥様の目から、みるみるうちに涙があふれる。岡本が、あの事故以来、気丈に振舞っていた奥様の声を上げて泣き崩れる姿を見たのは、この日だけだ。「これ、もらえませんか・・・?」と震える声で懇願された岡本は、メモの内容をプリントアウトし、後日お届けにあがった。手帳など本人の記録が残るものはすべて燃えてしまった後となっては、これが唯一遺された、家族に向けたメッセージとなったのである。

「お客さまと何気なく交わした言葉や、FFで伺った内容を、普段から記録する習慣があったことが幸いでした」と岡本は語る。契約者の想いを、ありのままに記したメモ。遺された家族にとって、その一文がどれだけの意味を持つことになるのか――岡本は、この事例を通じて改めて痛感させられたという。

そしてこのメモは、この世に新たな生命を送り出す力も与えてくれることになる。実は、契約前に伺っていた“3人目のお子様”は、結果的に死産となってしまっていた。FFから契約に至るまでの3カ月の間の出来事だったが、T様はそれを岡本には告げず、契約内容を変更せずにサインしていたのだ。つまり実際には2人のお子様に、3人分のお金が遺されることとなっていた。
ところが四十九日を過ぎる前、奥様のお腹にまた新たな命が宿っている事実が判明したのである。ご夫妻にとっては4人目となるお子様であった。

「この子を産んでもいいのでしょうか・・・?」。妊娠が分かった奥様に、そう相談された岡本は驚きながらも、すばやく保障額を試算した。結果としてはT様の契約は、初めの設計通り、“妻と子ども3人”を支えるのに十分な保険金が残される内容である。岡本は自信をもって「保険金がお支払いできれば、資金面では不安はありません」と、力強くお答えした。

周囲からは産むことに反対する意見もあったが、奥様の決意は揺るがなかった。T様が遺してくれた“3人の子のためのお金”と、家族への深い愛情。これがあれば何があっても乗り越えていけると信じて、奥様はお腹の子の出産を選択する。
産むことにしたとの一報を受け、岡本はしみじみと感じた。「お客さまのことを本当に考えるならば、契約内容に妥協はできません。今回のケースでは、最初から3人目のお子様を想定して、十分な保障を提案していたことが幸いしました。その分保険料のご負担は大きくなりましたが、お勧めして本当に良かったと思います」。

その後、長くかかった事故調査もすべて終了し、保険金は無事に満額支払われた。奥様はその後、3人の子どもたちを抱えてお風呂に入る時間を、何よりも幸せに感じて暮らしているという――。

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